空飛ぶペーパードライバー

短歌やお笑いや映画や人生などの感想

2023年 印象に残ったお笑いコンテンツ

札幌在住のお笑いファンです。

M-1チャンプが誕生し、ウエストランド優勝イヤーが終わりました。2020年のM-1直後の「ウエストランドのぶちラジ!」がきっかけでファンになり、2022年末のM-1優勝からの活躍は追い切れないほどになりました。たくさんの出演メディアやライブの配信を見たり、想い高まり彼らの地元である岡山県津山市を訪れていわゆる聖地巡礼をしたり、東京での単独ライブに足を運んだりと、とても楽しい一年でした。

あとで振り返って楽しめるように、忘れないうちに、ウエストランド以外のことも含め個人的に印象に残った2023年のお笑いコンテンツのことを書き残しておきたいと思いました。

ざっくり時系列です。

 

「新春!親子愛フォン」という企画で、ファンにはおなじみの井口さんのお母様・真理与さんが電話出演。新年早々の朝の全国放送に乗った「いぐちんランド」、急に電波が悪くなる奇跡、ひな壇からぶっ込んでいく河本さんの「おい真理与!」など楽しい年明けだったのを覚えています。

 

井口さんの仕上がりまくった愚痴とエピソードトーク、何度もラジオネームを「ぶちラジネーム」と言ってしまう河本さん、「クスリ」のくだりを爆速で台無しにする河本さんとすかさず粒立てて笑いにしていく井口さんなど、ずっと楽しくて繰り返し聴きました。ぶちラジがあるとはいえ毎週30分+特別編ではあっという間すぎるので、また長尺のラジオも聴きたいものです。

 

2023年、いろんな仕事をしてきた二人の裏話が毎週聴けて楽しかったです。活躍を見て、これ次のぶちラジで詳しく話してくれるかな〜と楽しみに木曜を待つ日々でした。

とはいえチャンピオンになってもぶちラジらしさは変わらずでした。パーマ大佐・マシンガンズ・ぐんぴぃと標的探しに余念がなく、「傘とくらべて」「モデム」のコーナーやプレオーダーのくだりなどで時々バグりつつも、結局のところ何があっても地に足つけまくっていた井口さん。一方チャンピオンとしての今後が思いやられていたがゆえの序盤の「やってねぇわ」「スキル不足」「ありがとな」のくだりから約半年でしっかり8連休になった河本さん。

印象深いのは、優勝直後の怒涛の日々でも帰りの車内で意地で撮ったこの回です。ANNの振り返り、有吉の壁でのスノボを使ったM-1結果発表ネタへのズレた一部の反応の話、年末年始の出演ランキングに入る勢いの真理与様の話など盛りだくさんで、充実したチャンピオンイヤーの幕開けらしい回でした。

他には「#562 マキタの40Vでテンションあがる」「#565 金スマのタイタン特集で悪田中」「#566 R-1には夢がない」「#567 1人の仕事が増えてきた!」「#575 太田夫妻、12km歩く」「#576 パーマ大佐の悲しいお知らせ」「#583 ディズニー」「#585 河本8連休」「#598 体調激悪!人間ドック」「#601 ぐんぴぃコメント事件」などの回がお気に入りでした。

こういうことを言うと自分の中のイマジナリー井口様からくしゃくしゃにした紙を投げつけられてしまいますが、やっぱり河本さんが機嫌よくボケたりズレたことを言って高笑いしている回は井口さんもよく笑うし満足度が高いなぁと思います。自分が2020年のM-1直後のぶちラジでウエストランドにハマり出したのも、河本さんが楽しそうにたくさん喋って高笑いしているのを見てこんな人なのかよ!めっちゃ面白いじゃん!となったのと、それにあきれ返りツッコみながらも井口さんもめちゃくちゃ楽しそうに笑ってて、そんな二人が魅力的だったからです。

 

1クールあっという間でしたがウエストランド冠番組を見られてハッピーでした。この回は「ポーカーフェイス」がテーマで、河本さんVS浜田さんで激臭に耐えながらカレーを食べる対決がありました。予告とかダイジェストで流れていた、河本さんが銀のドーム状の蓋を浜田さんの方に向けてスプーンでガンガン叩いて威圧するシーンが怖すぎてめちゃくちゃ気になったのに本編で使われておらず、拍子抜けした記憶があります。足ツボマッサージでポーカーフェイスを貫きながらスッ……とズボンの裾を直していた河本さん、そのまさかの理由が近く明らかになったのも面白すぎました。

 

  • カミナリの記録映像 【グルメ】カミナリ思い出のサロンで出された絶品コーヒーを完全再現!(YouTube

カミナリの記録映像は、ドンキーコングの音楽をテーマにした動画がYouTubeのおすすめに出てきて最高の企画!と思って見はじめて、ジーコor瞳、ときメモ実況を見て本格的にハマりました。このチャンネルのおかげでテレビや漫才とは違うカミナリの新しい魅力を知ることができました。

この回は独自性しかない企画内容が良かったのと、コーヒーを試飲する際のミニコントがくだらなすぎてめちゃくちゃ笑いました。そしてこれを書きながらリベンジ編を見ていないことに気がついたので楽しみに見たいと思います。

イギリス編、デスクリムゾンシリーズ、実家メタルギアソリッド、思い出の床屋でシャンプーなどもすごく良かったです。

 

  • 教えて多田先生~多田専用お笑い専門用語編~ (ライブ)

2022年にたまたま見たお笑いバックスちゃんねるの「復活の福井~近況報告独演会~」が面白すぎたのをきっかけに大宮セブンやひくねとチャンネル、「一座」周辺にどっぷりハマりました。

2022年冬に公開された「池袋で朝までお笑いの話をした話」シリーズが非常に好きで、そこから発展したライブを2月に東京に滞在していた時期に観に行きました。お笑いバックスという特殊空間で行われている実験がショーへと進化していく過程を垣間見ることができて面白かったです。閉館前のよしもと有楽町シアターに滑り込みで行けたのも嬉しかったです。

お笑いバックスや一座は観測を少しでもさぼると一気についていけなくなるのが難点で、最近はご無沙汰気味になってしまっていますが、また折をみて掘りたいなと思っています。

 

同じく2月に東京に行っていた時期に観たZAZYさん主催の大喜利ライブです。ななまがり森下さんは天才を通り越してもはや天使だと思った夜でした。

21時開演と遅めの公演で森下さんは前の仕事から遅れての登場でしたが、のっけから全力の乳首隠せない男で会場を沸かせ、大喜利ももちろん全力、みごと優勝をかっさらい賞品のYogiboの枕を受け取ってエンディングかと思いきや、その枕で横になりおもしろ寝言を発するというくだりを即座に生み出し、周りにも「これすごいよく眠れるよ!」とガンガン振っていき、その一言がイマイチだとすかさず首元に手刀を入れて気絶させて再トライさせる、と終わりの終わりまでお笑いしまくる姿が眩しかったです。

AGE AGE LIVEに夢中だった10代の頃から憧れていた無限大ホールに初めて行けたのも感慨深かったです。

 

これも東京に行っていた時期に有楽町の寄席ライブで観たネタです。同じ題名が当てはまる代表作がうるブギにはもう一つあり、息子がミュージシャン志望という設定も同じですがまったく別のネタで、YouTubeになくて残念なのですが2023年に見たネタの中でもトップクラスに好きなコントでした。最初に、ん?と思うポイントがあり、仕掛けがわかってからは具合悪くなるくらい笑わされ続けました。配信も買って何度も見返しました。うるとらブギーズ大好きです。

 

ぶちラジの「二代目森泉」で訓練してきた河本さんの内装屋トークが実を結んで歓喜したり、かと思いきやセットのサーフボードでナダルさんに殴りかかるという狂気じみた行動でスタジオをとんでもない空気にしたりと見ていて感情が忙しかったです。

 

  • マルコポロリ! ランジャタイが許せないSP (テレビ)

井口さん×国崎さんのキッズリターンコント再現のくだりが面白すぎて繰り返し見ました。3助さんの暴走と隠せない悲哀、果敢にツッコんでいくきしたかの高野さんも面白かったです。

 

  • フリースタイルティーチャー 芸人 VS ティーチャー勝ち抜き戦 (Abema)

裂固さん、DOTAMAさん、崇勲さんを倒した井口さんの獅子奮迅の活躍、めちゃくちゃかっこよかったです。実はとんでもない快挙なのにあんまり評価されてない!とオトステやお笑いナタリーの「今月のお笑い」でだいぶ後になっても愚痴っている井口さんがまた最高です。

 

  • オトステ #95 敬愛の念、ひとつ込めましょう (Podcast)

オトステはウエストランドの2022年M-1決勝進出が決まったくらいから聴きはじめて、ぶちラジとはまた違う井口さんの魅力、ルシファーさん・ジグザグジギー池田さん・井口さんお三方の絶妙なハーモニーにすっかりハマってしまいました。旧知の仲でお互いの歴史や面白さ、イジっていいラインも完璧に理解している三人なので、のびのびとした掛け合いや悪ノリが本当に楽しいです。2023年はオトステのおかげでお笑いを見るのが何倍も楽しくなりましたし、たくさん元気をもらいました。

一番好きだったのが、見出しに書いた回のルシファー軍団募集のコーナーに届いた「ポッドキャストマスターヒデト」のメールのくだりです。このコーナーはいけいぐ対ルシの2:1の構図でいけいぐがくだらない悪ノリを続けてルシ氏があきれながらツッコむのが毎回面白いのですが、この回は特に怪文書じみたメールとの相乗効果でいけいぐのすっとぼけ芸が冴え渡り、ルシ氏の正論ツッコミも味わい深くてずっと笑っていました。何度聴いたかわかりません。

他には「#83 池田勝SP~いいね欄と宮澤とイタコ~」「#84 あいつの見る景色、居場所、価値観が変わってしまうのかな...」「#88 誰も幸せにしてない坊主」「#90 通年おじさんハゲハゲ」「#93 やれんのか?喝っちゃんの底力見せてくれよ!」「#114 反則と鬼噛みからの抱擁愛撫」「#117 ハートリージャクソンのパーソナルトレーナーが写ってるから」「#120 ジグザグジギーキングオブコント2023…決勝行きました!」「#123 ゼロというか、せと」などの回がお気に入りでした。タイトル書き出してるだけでニヤけてきます。振り返るとM-1優勝イヤーだった井口さんもさることながら池田さんも坊主に遅刻、バカラジオ終了、展示会貧乏、キングオブコントと話題に事欠かない一年でしたね。

2024年はR-1芸歴制限撤廃ということで、ルシファーさんを筆頭に三人の活躍がこれからまた楽しみです。

ウエストランドの単独を観に東京へ行ったとき、オトステでおなじみの新宿の中華料理屋「達磨」を訪れたのも良い思い出です。ニンニクチャーハンと餃子、めちゃくちゃ美味しかったです。

 

一生懸命進行する井口さんの隣で、謎のタイミングで資料内の相方の写真に吹き出してしまう河本さんがどうしようもなく面白かったです。そういえば、2021年の河本さんをフィーチャーした回がM-1優勝を機に再配信されることを願っていましたが結局されずで残念でした。もう一度見たいです。

 

「中田ウンコ事件」後の回です。例のせいやさんのツイートを見たときから放送を心待ちにし、やっぱり期待を裏切らないいわゆる神回でした。この件のおかげで霜降り明星の二人の面白さと素敵な関係性を再確認しました。

特に、せいやさんがこの件に便乗してきたホリエモンに対して「ウンコもう1本みーっけ」とつぶやこうとしていた話と、もしも宮迫さんが参戦してきて「動画でせいや聞けぇ!とか言ったら俺もうほんまに......お笑い辞めてもいいッ!」と心底楽しそうな粗品さんでめちゃくちゃ笑いました。

提言騒動でいうと、熱くなってツイートで言及したけど自身の定例ゲーム配信でそれに触れる頃には流れが変わっていて言えることがなくなりおもしろドストエフスキー選手権と詫び乳首でカオスになったマヂラブ野田さんのことも記録しておきたいです。でもいいこともいっぱい言っていたんですよね。野田さんらしい配慮とか愛を感じる配信でした。

 

  • チョコレートプラネットチャンネル 【ベーキング】中田ブチギレ問題 (YouTube)

中田敦彦専門家の長田さんと有識者たち(オリラジ藤森さん、シソンヌ長谷川さん、はんにゃ金田さん)が、チョコプラとオリラジの間で起こったとある事件から中田さんの深層心理を解明していく企画ですが、例の提言騒動より前に撮影されているのにすべてを予見していたかのような話の展開になっていたのがすごいし面白すぎました。そして結局のところ、中田さんの人間味とか昔からの仲間たちの中田さんへの愛情を感じ取れるところがこの動画の良さかなと思っています。好きすぎて何度も見たし、長い動画なので今でも眠れない夜に寝落ち用で聴いたりしています。

この動画があったからこそ生まれた藤森さんの「相方へ。」、動画末尾の長田さんの後日コメント、そして公開後の5分ラジオではすっかり興醒めしてしまっていた様子のチョコプラ二人まで全部面白くて最高のドキュメントでした。

他にチョコプラchではマネーのクズのパンポテ谷さん回も続編まで含めてめちゃくちゃ面白かったです。揺れ動く長田さん、そして谷さんの底知れなさに引き込まれました。

 

ウケるはずのない不条理な台本と、何も知らないお客さんの前でそれをやらされるウエストランドの不憫さで笑いました。コメディーカレー!

 

  • 春とヒコーキのグピ⭐︎グパ⭐︎グポ #55【ゲスト:レンタルぶさいく】フィリピンの恋、#57~58 フィリピン旅の思い出 (GERA)
  • バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】 レンタルぶさいく救出編inフィリピンシリーズ (YouTube)

キモシェアハウス、ピーター博士関連の話が大好きで、GERAのレンぶすさんゲスト回は待望の新章突入でした。繰り返し聴いてYouTubeを心待ちにし、ついにフィリピン編の動画更新が始まると「終わらないでくれ」と願いながら日々楽しく見ていました。

GERAでのエピソードトークの時点でも臨場感にあふれ最高でしたが、動画を見たらトークで聴いて頭の中に思い描いていた画がそのまま広がっているようで、春ヒコの二人の話術のすごさも改めて感じました。

グピグパでは#41~42の町田さんゲスト回も面白すぎて何度も聴きました。バキ童chではピーター博士とリップグリップ岩永さんが出てる回全部、7年ぶりの帰省、ワタサバ缶で料理、ショタを語る、ネットミーム総選挙、土岡さんの卒アルなども良かったです。スウェーデン編はまだ少ししか見れていないのでとても楽しみです。

 

カベポスターの、穏やかに見えてその実すごく尖ったことをやっているところが好きです。単独は2021年の「に日に羊飼い」から毎回楽しみに見ています。新ネタを見るたびに、いったいどんな目線で世界を見たらこんなに独特で面白いことを思いつくのだろうと永見さんの発想に感服します。浜田さんのツッコミも、お気に入りのものをメモアプリにためているくらい好きです。

最後のネタがM-1 2023でも披露された「おまじない」で、やっぱり一番面白かったです。ほぼ単独ライブでしかお目にかかれないコントも毎回面白くて、東大受験のネタが特に好きでした。今後の単独も楽しみです。

 

この夜はなかなか眠れなくてリアルタイムで聴きました。「バカでもあるのかよ」「ダルシムってなんすか」「リボばんはってなんすか!」など、深夜の布団の中で声出して笑ってしまう瞬間が何度もありました。

これをきっかけに高野さんをもっと摂取したくなり、ブタピエロも聴くようになりました。岸さんの面白さ、そして相方を面白くすることにかけての天才さも知ることができて、きしたかのがもっと好きになりました。

 

感謝祭は、最後の結果発表でのニューヨーク嶋佐さんがセットを殴りながら過剰に悔しがるシーンで声出して笑いました。その後のニューラジオを見たら思ったより本気で悔しかったのだと知りそれでまた笑いました。

後夜祭はなんといってもラストの河本さんですね。見事最下位になり、慌てて足ツボの罰ゲームを受けるも無反応で何も起こらないまま番組が終了、深夜に大笑いしました。VSウエストランドで足ツボ攻撃が効かないことが判明していたのがここに繋がってくるとはと頭を抱えました。

 

  • チャンスの時間 ブレイキングヤンチャオーディション6 (Abema)

どのお題でも無双し去り際に至るまで完璧だったくるまさん、ハマってもハマらなくても面白すぎる熊プロさん、後半のベテラン勢による戦隊ヒーローポージングや競馬のくだりとずっと笑っていた回でした。

チャンスの時間でいうと、「ウエストランド・井口の愛を取り戻せ」の回で相方を泣かせるための企画なのに人一倍涙もろいせいで誰よりも綺麗な涙をたれ流しつづけた河本さんも最高でした。

 

この動画は短時間に自分の好きな感じのラブレターズの空気が詰まっていて何度も見てしまいました。特に溜口さんのグギギ……と息を漏らすタイプの吹き出し方にどうしようもなく笑いを誘われます。

決勝で披露された犬のネタは確か初見がネタパレで、めちゃくちゃ笑った記憶があります。耳心地いい-1で話題になっていたワンダーペイもあとから知り、YouTubeで繰り返し見ました。あの音声を溜口さん(たぶん)が録音している姿を想像すると面白すぎてダメです。

 

サルゴリラになってから児玉さんがボケに回るネタを見るのは初めてでした。二本ともめちゃくちゃ面白かったですが、特に二本目の魚のネタは涙流しながら笑って何度も見ました。児玉さんの言葉尻のもちゃっとする感じとか、ずっと変わらないサルゴリラジューシーズ)らしさも随所に感じて笑いとともに感動もおぼえました。

あとはマジックのネタの「午前中に区役所行って...…」の瞬間、キングオブコント2014の犬の心の「リバーシブルかよ」の爆発をなぜか想起し、深いところでのつながりを感じてぐっと来たのも思い出です。あとからK助さんの感想を読んだら同じことが書いてあり、他にも同様に感じた人がけっこういたと知って、嬉しくも不思議だなぁという気持ちになりました。似ているようでそれが何なのかうまく説明がつかないんですよね。押見さん曰くサルゴリラは「妹」らしいので遺伝子レベルの謎なのかもしれないです。

 

ファイナリスト池田さんの裏話がたくさん聞けるかと思いきやほぼ井口さんの独壇場(と喫煙所からの天国ルシ氏の中継)で、非常にハイカロリーなライブでした。特にゼンモンキー荻野さんの「足バタバタ」への鋭くしつこいメスの入れようはすごかったです。いけいぐによる再現の視覚的な面白さもありつつ、井口さんらしい目の付け所にさすがと思わされたことが印象深いです。

 

内容の面白さだけでなく、しんいちさんのエピソードトークが抜群であると知れたことで満足度が高かったです。なかでも河本さんのエピソードの「うぅ~延長~!!」は2023年で一番くらい爆笑しました。最終的にはゾッとしましたけど。

ゲストトークではアイパーさん、ゆにばーす川瀬さんが半生を語る回も非常に面白かったです。あとは人生ベスト10に入るくらい好きな番組だったウチのガヤがすみません!を失った心の穴を未だ埋められていない自分は「後藤輝基を語る」の回にとても癒されました。

 

この時期井口さんの恰好の餌食だったぐんぴぃさんの代役ということで冒頭から愚痴が止まらないガス抜きラジオ。面白すぎてすぐに何周もしました。ウエストランドの単独ライブに行かなかったひつじねいりの言い訳が散々だった#140も面白かったです。

 

少年の高いポテンシャルとそれを活かす最高の適役せいやさん。とても素敵な依頼でした。スタジオに来ていた少年がギャグを生披露して盛り上がり、照れくさそうにする姿もほっこりして良かったです。

2023年は4人の新探偵が誕生しました。永見さんが折に触れて夢だと口にしていたナイトスクープの探偵になることがこんなに早く叶うとはとびっくりしたのも思い出です。最初の方は難しい依頼が多くてちょっと不憫ですらありましたが、親友かどうか確かめたい、馬に乗って登園、クーラーボックスを盗まれた、二階に上がれない古本屋などの依頼が面白かったです。

 

二日目の公演を現地で観て、帰宅してから配信でも何度か見ました。単独ライブへの愚痴から始まり、ザ・コンビニの「疲れた」実演、ゲームのネタの構造を利用した某大手事務所の若手イジり、後半になるにつれて緊張が増してくる河本さんを見逃さない井口さんなどで大笑いしましたが、最後の最後は河本太が持っていきました。

会場では受付近くで光代社長を見かけたり、爆笑問題からのお花が届いていたり、物販などのスタッフがぶちラジでおなじみの面々や公式弟しびれグラムサムだったりと、タイタンファミリーの密度を生で感じられたのも良い思い出です。

あとは、お笑いナタリーの記事「人の単独ライブにごちゃごちゃ言っていたウエストランド、5年ぶり単独ライブ開催決定」について、井口さん自身の記事内のコメントがもとになっているタイトルなのにお笑いナタリーからのイジリだと勘違いしたSNS上などの反応に対して各所で怒っていた井口さんのことも記録しておきたいです。他の愚痴とも結びつけながら、中身を見ずに表面だけで信じたり反応する世間やお笑いファンについて「今って、一ミリも考えることをやめたんだよ?みんな、人って」と嘆いていた井口さんの、本質を突きながら笑いにするさまは真骨頂ともいえる凄みがあり、笑わされつつも自分自身はどうだろうと省みたりもしました。

 

  • ネタパレ 11/17 (テレビ)

ゾフィー最後のテレビ出演でした。代表作ふくちゃんで締めくくり、エンディングで流れた、これまでの軌跡と二人からのコメントをまとめたVTRがとても良かったです。BGMの「星降る夜に」もすごくマッチしていて、驚異の67回出演を遂げた功労者ゾフィーへの番組サイドの愛と感謝を感じました。

個人的には、2019年頃から久しぶりにお笑い熱が上がったきっかけの一つがネタパレで、まとめVTRで流れたコントがどれも懐かしくていろんな思い出が蘇りました。ファイナルデッドシティとかめちゃくちゃ好きでした。

しくじり先生ゾフィー解散回もすごかったです。精神修行を経て達観したみたいな上田さんと、どうしようもなさすぎていっそ清々しいサイトウさん、哀しいけどたくさん笑ってしまいました。最後に相方の今後を本気で気遣う言葉をかける上田さんのもどかしそうな切なそうな表情が印象に残りました。

 

泊まりロケで岡山のいろんな場所に行くというとても贅沢な番組で、4週楽しみに見ていました。河本さんのおばあちゃんに会ったり、河本さんの弟さんとまさかのポイントでニアミスしたりとちょっとした奇跡もありました。

個人的には、商店街や鶴山公園、自然のふしぎ館、本家ウエストランドなど、津山旅行で実際に行った場所がたくさん出てきて記憶と結びつき、より楽しかったです。

 

回を追うごとに面白くなっていって繰り返し聴きました。「宮澤の彼女募集のコーナー」の行く末が気になるところで終わりましたが、特別編がすぐに実現したのも嬉しかったです。

2023年はラヴィット!での宮澤社長の活躍にもたくさん笑わせてもらいました。今年もたくさん出てくれることを願っています。

 

  • THE W 2023 あぁ~しらき (テレビ)

泣くほど笑って、ひと晩で5回くらい見ました。なにかすごいパワーをもらいました。ありがとうしらきさん。

 

内容もさることながら、審査席に据えられたウエストランド(というか井口さん)の苦しまぎれのコメントと、「面白くない面白くない」を連呼しながら勢いよくモニタリングルームに突入していくシーンが最高でした。

 

  • ニューヨークOfficial Channel 【熱唱】歌の記憶のみの嶋佐と歌ネタでM1決勝のダンビラムーチョ大原は、1998年-2002年のヒット曲のサビを歌詞見ずに連続5曲歌えるのか? (YouTube)

このシリーズはどれも面白かったですが、現状の最新回である大原さんゲスト回が一番笑いました。特に、ちょこっとLOVEの「夢という字を二人で書くぞ」を嶋佐さんが急に思い出して大原さんがハッ......!となるシーンが最高でした。

ゲストトークだと山田ナビスコさん、スパイク、マリーマリー、サルゴリラMr.シャチホコさんの回などが面白かったです。特に、シャチホコさんが徐々にアッコさんのモノマネを研ぎ澄ませていき、ウチガヤにて「君は何をされてる方なの?」で爆ハネするまでのエピソードは胸が熱くなりました。

真べぇVSケツの一連の流れも楽しく見ていました。ライブを終えてのニューラジオ辻さんきむさんゲスト回でオチがついたのが最高でした。12月の鬼越chのケツさんゲスト回でもこの件やニューヨークchに触れていてやっぱり面白かったです。

 

  • ドキュメンタル シーズン13 COMBINED (Primeビデオ)

攻守ともに不安しかない河本さんをただただ案じながら見はじめましたが、想像していたよりもいろんな展開があり、この一年のウエストランドのいろいろな「点」が線になる瞬間がたくさんあったという意味でも楽しかったです。やっぱりゾッとする瞬間もありましたけど!また、井口さんが粘り勝ちして笑いをもぎ取ったシーンはさすがでした。

あとはYouTubeに上がっていた発表会見の「鉄球側が泣いてた」「錆びたろかな」のくだりでめっちゃ笑いました。

 

YouTubeの予選動画はパンポテ準々決勝の例の瞬間が一番笑いました。カベポスター3回戦のあだ名のネタもすごく好きでした。

敗者復活はスタミナパンからトムブラウンの流れで笑いすぎて最高の気分になりました。エバース、フースーヤもすごく面白かったです。そして最終的には吸い寄せられるようにスタミナパンを繰り返し見てしまう自分がいました。

決勝は令和ロマンの二本目がやっぱり面白かったです。二年前のM-1予選で見てめちゃくちゃ好きだった町工場のネタがとんでもなくブラッシュアップされていて、圧倒されながら爆笑しました。あとはカベポスター浜田さんの「......せやなぁ」がいかついくらい面白かったです。

決勝後のぶちラジも良かったです。河本さんが放送直後の舞台裏でヤーレンズとのやりとりに号泣してしまい、それを目ざとく見つけた真空ジェシカ川北さんが「まーちゃんごめんね」と絡んできて泣きながら追い払った話と、自分が泣くのは違うと恥ずかしくなってカメラから逃げ回った話には特に笑いました。

 

  • 向井長田のくるま温泉チャンネル 最高の友達JAPAN旅#1~5 (YouTube)

9月配信ですが年末に見ました。サルゴリラ優勝以降、東京NSC9〜12期くらいの世代の先輩後輩というより友達感の強い独特の空気の魅力を再発見していて、この動画はなかでも最高でした。もうお笑いとかではなくただただ楽しいだけの時間。サルゴリラ優勝おめでとうシリーズも開始したのでこれからまた楽しみです。

 

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これを書くに至ったのは、ニューヨークの動画で知ってからよく見ているK助さんのXやブログからの影響が大きいです。M-1 2023の記事のまとめ方についてXで「後で楽しく読み返せるように」と前置きされていたことや、「ヨイ★ナガメ的流行語大賞」を見ていて、なるほどお笑いの感想を書くことって「記録し、振り返る楽しみ」の側面もあるのかと気がつき、自分もやってみたいと思いました。

コンテンツが飽和し、ひとくちにお笑いファンといっても見ている世界が全然違う時代なので、自分の視点での2023年の印象に残ったお笑い、を記録しておけたことにひとまず満足しています。来年以降の自分がこの記事を読み返して、そうだったなー、と楽しんでくれればいいなと思います。 

 

(11月に「謎の屋敷」が現存することをこっそり確認してきたときの写真を添えて終わります。)

 

トム・ブラウンが好きすぎて書くブログ

(2024年1月現在、久しぶりにログインしたはてなブログに、書いた記憶のまったくない下書きがあり、なかなか熱があって良かったので多少の加筆修正をしつつ公開してみます)

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M-1グランプリ2018でしたね。この大会が結構好きなので決勝進出者が決まったくらいの段階でGYAO!の予選の配信を可能な限り(準々決勝と、準々決勝で好きだった組と決勝進出組の3回戦)見て、当日は敗者復活を見て本戦を見る、というのをしたんですが。

熱心なお笑いファンの友だちが何人かいるのでありがたいことに毎年この時期になるといろんな情報をもらい、トム・ブラウンが熱いというのを耳にしてました。

準々決勝の「加藤一二三さんが土から出てくる」ネタを見て一発で好きになり、すぐに3回戦の「ナカジマックス」を見て完全に虜になって本戦当日まで繰り返し繰り返し見てました。

賛否が分かれる芸風なのが一目瞭然とはいえ完璧に面白いしこの爆発力なら最終決戦はいくんじゃないか、いってほしいな…...とトム・ブラウンの行方に胸ときめかせつつの本戦。出番がうしろうしろだったのもいい感じにハラハラしましたね。

初見ではなかなか評価がしづらいというかびっくりしすぎてどう笑っていいかわからない、みたいなムードがあったように思えて、だからこそ2本目では空気が変わるかも知れず、披露できなかったのが残念です。

決勝での「ナカジマックス」は、3回戦で見たものよりかなり「間」をとっていて、これはネタ時間(尺)の違いからくる調整とか、ざわつかせて笑いを起こす狙いなのかなとかいろいろ想像したんですが、食い気味でどんどん笑いを増幅させるという予選で感じていた良さが減少してしまったような印象がありました。それでももちろん面白かったんですが…...。

キャッチフレーズ「無秩序」だったけどむしろ彼らなりの秩序でしかない漫才なわけで、そこがめちゃくちゃ好きだし美しいなぁと思います。

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(この後は書きかけで終わっていたんですが、たぶん2018年12月4日の月曜The NIGHT「M-1芸人で漫才を語る。」を見ての感想だと思います)

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40分くらいからのトム・ブラウンのくだりで、布川さんがつかみがあんまりウケなくてヤバ!と思った、という話をしたら、井戸田さんが「ヤバいとか思うタイプの漫才やってる?」「どう思われてもいいっていう漫才じゃん」てつっこんで、みんな思わず笑った後、みちおさんが「あの〜、ライブで叩いてきましたんで」って返して笑うとこが好きでした。

「割と真面目に作ってきてんだ。まぁそらそうだよね」「すごいネタだもんね」ってちゃんとまとめる井戸田さんの感じもよかった。

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(そして2024年1月現在に戻ります。月曜The NIGHTは去年終わってしまいました。トム・ブラウンは去年の敗者復活戦でのネタも最高でした。ファイナリストよりも長く映っていたアナザーストーリーでの優しい二人の姿も良かったです。)

砂の気持ち - 稀風社配信にお呼ばれした話

 
先日、私が所属している北海道大学短歌会の現在の会長であるところの三上春海さんがそとでもともとやっている「稀風社」というすてきなサークルの歌会をUstream配信するというやつに、おなじく北大短歌所属で第五十七回短歌研究新人賞を受賞したばかりの石井僚一さんというヤバめのひととともにお呼ばれした。
稀風社は鈴木ちはね(すずちう)さんと三上春海(カミハル)さんのふたりによる短歌をする集まりで、「稀風社の⚪︎⚪︎です」と名乗るのはこのふたりだけなのだけど、今回の配信に参加していた木屋瀬はしごさんや情田熱彦さんのようにまわりにすてきな方がたくさん集まっていて、稀な風がぴゅうぴゅう吹いている。
鈴木ちはねさんが以前ブログで、北大短歌第一号に掲載された私の短歌の感想を書いてくださった縁などもあり、呼んでいただいた。(だいぶ経っている今でも嬉しすぎるのでリンクを貼る⇒父が以前住んでましたと言いかけてやめて鍋へとなだれるうどん (短歌の感想 その3) - サイトシーイング
 
配信は上にリンクで貼ったとおり、録画が聴けるのでよろしければぜひ。 
歌会の配信に参加しての個人的な感想は、とにかく私は反射神経がにぶいのだなぁということである。どんくさい。想うことを言語化するのにとても時間がかかるし、自信もない。北大短歌に所属して月に2回とか歌会をやる生活がもう2年とかになるけれど、相変わらず無駄に緊張してしまい選にも評にもめちゃくちゃ悩む。恥ずかしい。もっと意識的に改善しようとしなければ。みなさんとても反応が早くて、面白いことをつぎつぎぽんぽこ述べていて、タイミングも適切で、物腰は柔らかで大人で、かっこうよかった。石井さんもちゃんと石井さん節を効かせていてばっちりだった。
 
配信に出ていたのだから配信中にしゃべりなさいよという話なのだけれど、時間を置いていろいろと想うところもあるので、せめてもの自分の気持ちの供養とみなさんへの感謝とお詫びの気持ちをこめて、歌会で提出された歌について言い足りなかったことやあらためての感想をここに書いていきたいと思う。
 
 
1.よく見ると砂みたいのが使用済みコンドームの中に混じってる(石井僚一)
 投票:鈴木 視聴者票:1(taku_sona)
 
 歌会をし終えて、もう一度全体を見回して選を入れなおすなら、この歌にするかも。ほんと、「よく見ると」じわじわくる歌。歌会中、「わけもなくよく見ちゃってる変な状況説」と「やぶれてないか確認するためによく見てる説」とが出てきたけれど、やっぱりどっちにしろ、みんなそんなに使用済みコンドームを「よく見」たいわけはないはずで。でもそれを「よく見」ちゃってる、それはやっぱり奇妙。それと事後の我に返ってる感じ、静かなやるせない感じが、淡々とした説明口調でよく出ているような気がする。それから、砂みたいのが混じってる、っていうことの異物感と、事後のなんとないぎこちなさというか居場所のなさ、みたいなのがやっぱり響き合っている。ぬるぬるした感じのなかにあるざらっとした感じ。

2.日本国ほろぼせ 金盥の中に貝らは念ず砂を吐きつつ(鈴木ちはね)
 投票:じょーねつ、中村 視聴者票:2(amazo3、wataruyamada395)

 票を投じた歌でした。歌会中、「ほろぼせ」がひらがな表記であることの良し悪しとか意味合いについて話題になっていたけど、私は「ほろぼせ」がひらがなであるところをよいと感じました。「金盥」「貝らは念ず」と、かたい表現をしているけれど、「滅ぼせ」までは漢字にしてしまうほどの本気ぶりではなく、ひらがなで「ほろぼせ」っていう、ちょっともう力があんまり残ってない感じ、やっぱりそのバランス感覚を魅力ととらえることができるんじゃないかと。あと、貝ってやっぱり物言わぬものだから、言葉にならない、たしかに鬱々とした怨念を「念ず」っていう感じだよなあ、と。「念ず」、出てきそうで出てこない表現なんじゃないかと思う。言葉は吐けないけど砂を吐いている、というのもすごく悔しそうな感じが出てる。

3.よく来たね遠いところを 砂と水で君にごはんを作ってもらう(中村美智)
 視聴者票:1(imaishin1731)

 自分の歌です。歌会中に石井さんが「砂に水を持ってくるのが良い」と言ってくださったのですが、題詠「砂」で詠むとなって「水」を持ってきたのはたしかにちょっと閃きだったかもと思います。もっと物質的なイメージで、とらえどころのない感じの「砂」の歌を詠むつもりだったのですが、考えているとどうしても「砂」っていうものが抱えている、悠久の時を超えてきた感じというか、遥かなるものっていうイメージが強く出てきて、こう、「母なる感じ」でいってみた次第です。あとはやっぱり、はじめのほうでじょーねつさんが指摘していたように「幼児性」っていうのがキーワードで、大きくなった私たちからすると「砂」といちばんよくふれあっていた記憶というと、砂場で遊んでいた小さな頃の感覚にたどりつくんですよね。
 自分じゃないひとが自分の歌をいろんなふうに読んでくださるのはやっぱり幸せなことだなぁと、みなさんの評を聴いたり見たりしながら想っていました。

 4.盛砂にロケット花火を立てたけど安定しなくてこっちに来てる(木屋瀬はしご)
 投票:石井 視聴者票:1(basyou0418)

 歌全体としては、「けど」で「転」になって、「こっちに来てる」で「オチ(結)」としてわーってなる感じ、というベタな四コマ漫画感のある構造が良い、というじょーねつさんの評が完璧だなぁと思いました。
 石井さんは妙に「ひとり花火説」を推していたけど、やはり複数人で花火をしていて、その中でもとくに自分のいる方、「こっち」に来てる、という読みの筋が「妥当」なのかなとは思う。そしてそうなってくると、「砂浜にロケット花火を立てたけど」っていうなんてことなさそうな表現が切なく効いてくる。というのも、その行為の主語(複数人いる中の誰が立てたのか)が書かれていないことで、それを書く必要がないっていう感じ、つまり「それはその場にいた『私たち』みんなの行為だった」っていう含みが出てきて、その儚い、つかの間の団結性みたいな感じがきらきらしてきて、切ない。そしてこれは「立てた」のが「こっち」にいる自分でもそうでなくても効いてくる話。やっぱり「花火」っていう題材だからそういう夢幻っぽい感じを呼び起こすっていうのはあるんですけど。しかも、火花が出るようなきれいな花火じゃなくてロケット花火っていうふざけた感じなのも、ギャグっぽさのある切なさというか。

 5.やな話砂だれている堤防の凹みの中の砂が俺だよ(情田熱彦)
 投票:三上 視聴者票:2(antiskeptic、maedarokugatu)

 わからないから票を入れた、と三上さんが言っていて、その感覚というか姿勢がやはり善いなぁと思う。すごく変な表現を連発している歌で、やっぱり基本的には「わからない」。だけど「やな話」っていう変わった導入(じょーねつさん曰く「枕詞」)、「砂だれている」っていう見たことない表現、「の」でたたみかけて「俺だよ」でズドーンと終わる感覚、面白い。すずちうさんが「情報が出てくるたびどんどんわけがわからなくなっていく感じ」というようなことを言っていたけれど、本当にそんな感覚。
題詠「砂」ということでいうと、「砂」っていう物質のとらえどころのない感じが意外とよく出ていて、ってあれ、これも歌会中に誰かが言っていた気がする。こういう評をしづらい歌の良いところや悪いところをちゃんと言語化するちからがみなさんちゃんとあって、見習いたいと思いました。なんだかんだ脳に残る歌だなあ。

 6.ぼくらには砂しか似合わないけれど、ふたりでつつむ春のご祝儀(三上春海)
 投票:木屋瀬 視聴者票:2(yorui_yozora、shinkuwa)
 
 まず「砂が似合う・似合わない」っていう発想自体が普通の感覚じゃない。題詠「砂」でこういう持っていき方をする人はなかなかいないのでは。だけど投げやりな感じではなく、ちゃんと作者なりに「砂」をとらえた上でこういう使い方をしているっていう感じがします。砂「しか」と言っているように、どちらかというとネガティブな意味で砂以外が似合わないということをとらえていて、だけれどそんな「ぼくら」に尊い繋がりを見出している感覚は確実。だめ押しのように下句では「ふたりで」行為をしていて、それも「ご祝儀を包む」という夫婦かなにか高度な繋がりをもったふたりでないとできない行為。はしごさんが「うらやましい」という感想を述べていたけれど、たしかにそう言ってしまいたくもなる感じがある。ただ、ソーシャルストリーム欄への投稿でもたしか指摘がありましたが、「けれど」でつないでいる上句と下句の関連性がそう簡単にはとれないところがあって、この感覚とか発想についての考察っていうこと以上の評がなかなか難しい歌。3首目もそういう感じだったかもしれない。
 
 
三上さんに、題を考えてほしいと言っていただいて、直感で「砂」という題が面白そうだと思い、設定させてもらったのだけれど、きっかけにはシャムキャッツってバンドの「渚」っていう曲のサビの「砂の気持ちになったよ」っていう歌詞があったような気がする。シャムキャッツは結構びっくりする歌詞をさらりと歌っているバンドで、はじめて聴いたとき「砂の気持ちってなんだ!?」と衝撃を受けた。結局未だにその真意はよくわかってないのだけど、この「砂」っていうののとらえどころのなさは面白いなー、いろいろ広がりもあるしすごく詩になる言葉だなー、と想っていたのです。
 
ところで、私は春の文学フリマですずちうさんとじょーねつさん(と、ご挨拶はできなかったけれどたぶんはしごさんもお見かけしました)にお会いしているのだけど、すずちうさんに「海岸幼稚園」を売っていただいて、はじめてちゃんと面と向かって会話をするという段になったとき、とても嬉しかったのだけれど、なにを言えばよいのかまるでわからず、口から出てきた言葉が「ツイッター全部読んでます」というものすごく微妙な発言で、すずちうさんにも「全部ですか…」というものすごく微妙な反応をさせてしまい、そのことを未だに私は後悔しています。先日の配信のあとも少しお話をする時間があったのだけれど、お伝えしたかったことがあと20個くらいあったのにぜんぜんうまくしゃべれなくてふがいなかった。ふがふが、またどこかでコミュニケーションをさせてください。
 
まとまりませんが、すずちうさん、かみはるさん、じょーねつさん、はしごさん、そして石井さん、ありがとうございました。またなにかご一緒する機会がありましたら、うれしいです。
稀風社さんについてかんがえていることとかは、またそのうちちゃんと書きたいとおもっています。(「海岸幼稚園」すばらしかったです、なんというか、まぶしかった。)

カオティック人間讃歌『野のなななのか』

野のなななのか』を劇場で観た。すさまじき生命賛歌、あっぱれだ。ツッコミどころは満載で、妙に古い劇チックなわざとらしい言い回しの台詞(とくに冒頭の方)はつぎつぎ怒濤のようにあふれてくるし、死んだ人も語るし、謎の人物も語るし、画面の向こうの私たちにも語りかけるし、主体の視点もころころ切り替わるし、合間合間に挿入されるあからさまなクロマキー合成で野のなかを行脚するちんどん集団パスカルズの姿は妖精のようだ。そんな「カオス」がカオスのままひとつの映画の中で成立し、こうして鑑賞者に伝わっていることに感嘆する。

軸は「おじいちゃんの死」からそのなななのか(七×七=四十九日)までの物語なのだけど、それをとりまき、3時間の大ボリュームに実にたくさんの人物が登場し、たくさんの物語が交錯し、たくさんの要素が盛り込まれている。ふるさととは何か、家族・親戚の血のつながり、伝承していくということ、青春、平和とは、生きていくということ、死んでいくということ。映し出される話題も、炭鉱町の栄華から衰勢を経ての現在、本土の第二次大戦終戦後も樺太で続いていた戦火、東日本大震災原発問題とさまざまにおよび、移り変わる。しかし、それらの要素が、ぽん、ぽんという挿話としてというより、物語の一貫した姿勢を強固なものにするため調和し、からみあってはたらいている。

非常に「しゃべり」の多い、言葉の多い映画で、大林監督が映画というマジックの中で役者の声を借りて未来へのメッセージを出し切った、というような感じがした。鑑賞しながら私は、年の功、って言葉を思い出していて、自分の何倍も人生を生き抜いてきたはるかな人からはるかなお話をずっと聞かされているような、すごくポジティブな意味で、そんな感覚になっていた。そのめまぐるしさが実に尊かった。受け取りたい。

クール・ジム・ジャームッシュ

ジム・ジャームッシュの作品には強烈に独特な「かっこよさ」があって、そしてそんな表現を、絶対全部「感覚」でやってるな、っていう感じが好きだ。理論づけたり、理屈で説明したり、言語化することができない、あるいはそれを拒む、絶対的圧倒的な「センス」としか言いようのないものの説得力。そしてそういうものを持っているひと、それを結晶化する能力を持っている芸術家は、たぶんたくさんいるのだけど、「我(が)」に負けずに映画という高度に産業的な分野でそれを発揮し成立させ、評価を得ているというバランスの取り方も非凡だ。

昨年公開の『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』もかなりうっとりな仕上がりだったのだけど、そのパンフレットに載っていたインタビューで、なぜ舞台にタンジール(モロッコ)、またデトロイトを選んだのかを訊かれて「多少抽象的になりますが、自分にとって感情的に魅力を感じるロケーションだったからです。(中略)具体的に『なに』に惹かれたのか、分析するのは難しいのですが、(デトロイトとタンジールが)自分にとって適している、また面白いと思える場所だったということでしょうか。」って完全に多少どころでなく抽象的・感覚的なことを答えていて、ああこれは、正味だ、といたく感動した。このひとは「感じる」のひとなのだ。

小汚い茶店でコーヒー(ときに紅茶)を飲み、煙草を吸う、さまざまな人々の11のエピソードを数分ずつのオムニバス形式で描く『コーヒー&シガレッツ』は、そのジム・ジャームッシュのセンス、いわば「見方」を純粋に感じるにもってこいな映画だろう。登場するのは、いまいち噛み合わないミュージシャンふたり、大女優と売れないロッカーの彼女という立場の違いすぎるいとこ同士、売れっ子役者と端っこの役者、武器について調べている美女とずれたウエイターなど、一癖二癖あり。ドラマティックな展開はなく、とりとめのない会話が繰り広げられるだけ。しかし、その端々からさまざまに感じ取れるものがあり、観ているうちジム・ジャームッシュ独特の「見方」のしかけにじわじわとやられる。おかしな話、噛み合わない会話、気まずさ、けだるさ、変な意気投合……肩の力の抜けた滑稽さが妙に心地よい。

そしてどの章でも、「労働者階級の飲み物」コーヒーのカップをカチンとあわせて優雅に乾杯をするその態度が象徴的だ。ジム・ジャームッシュの映画に出てくるかっこいいひとびとってみな「はみだし者」でお金とかあんまり持ってない。なのにすごく「優雅」なのだ。しびれる。

そういえばはじめてのジム・ジャームッシュ体験は高校のときに所属していた文芸部で顧問の勧めで観た『ストレンジャー・ザン・パラダイス』なのだけど、鑑賞後みんな困惑してかなり変な空気になった記憶がある。私も困惑した。どう評価して、どう感じて、どうおもしろがればよいのかがわからなかったのだ。だけど一度しか観ていないあのろくに筋立てもなく変なテンポの変な終わり方の映画は、白黒のざらついた画面は、強烈に印象に残っている。

ジム・ジャームッシュはとくに深夜に観ると「名作だな……」とか想って変な感じにテンションが上がったまま眠りにつけそうだ。もしくはぼんやり観ながら寝るのもよい。まだまだ観てないのがいっぱいある。愉しい。